オフィスの働きやすさを追求したレイアウト変更。しかし、その変更が思わぬ「落とし穴」になるケースがあることをご存知でしょうか。近年、働き方の多様化に伴いフリーアドレスを導入したり、会議スペースを新設したりする企業が増えています。その一方で、消防法への理解が不十分なまま工事を進めてしまい、「通路幅が足りず、消防署から是正命令。改善しなかったため罰金30万円を科された」「パーテーションを設置したら、火災報知器が適切に作動しない範囲ができてしまった」といった事例も後を絶ちません。
「うちのオフィスは大丈夫だろうか?」そう感じた方もいらっしゃるかもしれません。この記事を読めば、わずか3分でオフィス運営に関わる消防法の重要ポイントと、罰則を回避し、従業員の安全と事業継続計画(BCP)を守るための具体的な対策が分かります。
※「消防法15項」は、平成14年の法改正以前の表現であり、現在は主に消防法第17条の3の3などに引き継がれています。本記事では現場での通称「15項」として解説しています。
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そもそも「消防法15項」とは?事務所が該当する範囲と用途別チェックリスト
オフィスや事業所の安全を考える上で、避けて通れないのが消防法です。オフィスのレイアウト変更や用途変更の際に「消防法15項」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。これは、消防法そのものの条文番号ではなく、多くの場合、消防法施行令別表第一というリストにおける事務所などの建物の用途区分「(15)項」を指す通称として使われています
(ご参考:消防法施行令別表第一の例 - 津市PDF)。
そして、この「(15)項 事務所等」をはじめとする各用途区分の建物に、どのような消防用設備等を設置し、どう維持管理しなければならないかという具体的な技術基準は、主に消防法第17条(消防用設備等の設置及び維持並びに特殊消防用設備等の性能に関する技術上の基準)や、同法第17条の3の3(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)に基づいて定められています(ご参考:東京都交通局辞書)。
これらの法律の核心は、「建物を使う人は、その建物の使い方や広さ、収容人員に応じて、必要な消防用設備等を適切に設置し、常にきちんと機能するように維持しなければならない」という点に集約されます。
皆さまのオフィスが、この「消防用設備等を設置し、維持しなければならない建物(特定防火対象物といいます)」に該当するかどうかは、主に以下の3つのポイントで判断されます。
- 延べ面積: 建物全体の広さや、オフィスとして使用している部分の広さが一定以上か。
- 収容人員: そのオフィスで働く人の数や、出入りする人の数がどれくらいか。
- 用途変更: 例えば、倉庫だった場所をオフィスとして使い始めるなど、建物の使い方を変える場合。
あなたのオフィスは大丈夫?簡単チェックリスト
- ご自身のオフィスが消防法の対象となるか、以下のリストで30秒でチェックしてみましょう。
- オフィス全体の延べ面積が一定規模(例:300平方メートル)以上である、または最近拡張した。
- オフィスが建物の特定の階以上(例:3階以上で避難階段が一つしかない等)にある。
- オフィスに不特定多数の人が出入りしている、または最近イベント等で受け入れた。
- 間仕切り壁の設置や撤去など、大幅なレイアウト変更を計画している、または最近行った。
- 建物の用途を事務所に変更した、または変更を計画している。
これらのいずれかに当てはまる場合、消防法に基づく対応が必要となる可能性が高いです。特に「貸事務所」「シェアオフィス」「コワーキングスペース」「工場内や倉庫内の事務所部分」といった形態でも、条件によっては消防法の規制対象となります。少しでも不安を感じたら、専門家へ相談することをおすすめします。
オフィスレイアウトで陥りがちな3つの落とし穴 ─ 具体例と対策コスト
オフィスの使い勝手やデザイン性を向上させるためのレイアウト変更も、消防法の視点を見落とすと、大きなリスクにつながることがあります。ここでは、特にオフィスで発生しがちな3つの「落とし穴」と、その対策について見ていきましょう。
落とし穴①:通路幅が足りない!避難のボトルネックに
フリーアドレス制の導入や人員増に対応するためデスクを増やした結果、通路が狭くなってしまうケースは少なくありません。消防法では、まず避難経路の確保が最重要とされています。オフィス内部の通路幅について消防法自体に具体的な数値規定は明記されていませんが、安全な避難のためには建築基準法や関連するガイドラインで示される幅を参考にすることが一般的です。 例えば、災害時に人がスムーズに避難し、消防活動のスペースも考慮すると、主要な通路では900mm程度、その他の通路でも600mm程度の幅が確保されていることが望ましいとされています。このスペースが確保されていないと、消防署の立ち入り検査(査察といいます)で避 nạn経路の不備として指摘され、レイアウトの再変更やそれに伴う追加費用(小規模なオフィスでも数万円から)が発生する事例があります。
落とし穴②:良かれと思った間仕切りが避難口を塞ぐ!
「ここに壁を立てて、静かな集中スペースを作ろう」「オシャレなパーテーションで区切って、応接コーナーを」といったレイアウト変更はよくあります。しかし、その新しい壁やパーテーションが、非常口や防火戸の機能を妨げてしまう危険性があります。 実際に、防火戸の前に書類棚を置いてしまったり、避難ハッチの上に物を置いてしまったりして、いざという時に使えない状態になっているケースは後を絶ちません。ひどい場合には、避難経路を塞いでいるとして是正命令を受け、従わなかったために罰金(数十万円単位も)が科されることもあります。パーテーションの設置や撤去にも、数万円からの費用がかかる場合があります。
落とし穴③:天井のデザイン変更で火災報知器が機能不全に!
オフィスをおしゃれに見せるため、天井のデザインに凝ることもあります。例えば、既存の天井の下に新たにもう一つ天井(二重天井といいます)を設けて間接照明を組み込んだり、格子状のルーバーを取り付けたりするケースです。 しかし、これにより既存の火災報知器(煙や熱を感知するセンサー)が新しい天井裏に隠れてしまったり、感知範囲が適切でなくなったりすることがあります。これでは、火災が発生しても報知器が正常に作動せず、発見が遅れてしまう可能性があります。このような場合、感知器の移設や増設が必要となり、1箇所あたり数万円からの工事費用と配線工事費がかかることも。デザイン変更の際は、必ず消防設備の専門家にも相談しましょう。
オフィスに求められる消防設備基準:消火器・自動火災報知設備・誘導灯の設置要件早見表
オフィスの安全を守るためには、適切な消防用設備等を設置し、いつでも確実に作動するように維持管理することが法律で義務付けられています。ここでは、オフィスに関連の深い代表的な消防設備について、設置基準のポイントを分かりやすく整理しました。
消火器
どんなオフィスに必要?
対象:延べ面積300㎡以上の事務所など。(ただし、建物全体の構造や他の用途(例:飲食店や多数の人が集まる店舗など)が同じ建物内に併設されている場合は、事務所部分の面積が300㎡未満であっても、建物全体としてより厳しい基準が適用され、消火器の設置が必要となることがありますので注意が必要です。)
どうやって置くの?
歩いて20メートル(大規模なオフィスでは30メートル)ごとに1本以上。
床からの高さ1.5メートル以下の見やすい場所に。
「消火器」と書かれた標識の設置。
点検は?
外観や圧力などを確認する機器点検:6ヶ月ごと。
実際に操作して確認する総合点検:製造年から一定期間経過後(事務所用は5年)。
自動火災報知設備(自火報)
どんなオフィスに必要?
延べ面積300㎡以上の事務所。
建物全体の構造や他のテナントの用途によって、上記未満でも必要となるケースが多い(例:地下街にある、窓のない階がある、福祉施設が併設されている等)。
どんなもの?
火災による煙や熱を感知器が自動で捉え、警報ベルや音声で建物内にいる人に知らせる設備。
設置のポイントは?
部屋の広さや天井の高さ、使われ方に応じて、適切な種類の感知器(煙感知器、熱感知器など)を、未警戒区域ができないように設置。
受信機(火災信号を受け取る盤)は、人が常駐する場所や見やすい場所に。
誘導灯・誘導標識
どんなオフィスに必要?
原則として、全ての防火対象物(オフィスも含む)。
どんなもの?
緑色や白色のライトで、避難口の場所や避難の方向を示す照明設備や標識。
「非常口」と書かれた緑色のピクトグラム(絵文字)でおなじみですね。
設置のポイントは?
避難口の真上や、避難経路となる廊下・階段に、途切れないように設置。
床面や通路が一定以上の暗さにならないように、また、煙の中でも見えるように配慮。
停電時でも自動的に点灯するよう、バッテリーを備えていること。
これらの設備は、いざという時に確実に機能しなければ意味がありません。定期的な点検と、必要に応じた改修を怠らないようにしましょう。自社だけで判断が難しい場合は、消防設備の専門業者に相談するのが最も確実です。
届出・改修の流れと費用感:BCP視点で見る投資対効果シミュレーション
オフィスのレイアウト変更や消防設備の改修には、どのような手続きと費用が必要なのでしょうか。また、それを「コスト」と捉えるだけでなく、「投資」として考える視点も重要です。
まず、消防法が関わるようなオフィス内の間仕切り変更、模様替え、消防用設備等の位置変更や増改設といったレイアウト工事を行う場合、その規模や内容によっては、工事を開始する7日前までに管轄の消防署へ「防火対象物工事等計画届出書」を2部提出することが義務付けられています(消防法第17条の14)。この他にも、設置する消防用設備等によっては「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書」など、複数の届出が必要となる場合があります。そのため、まずは計画段階で所轄消防署や専門業者へ相談し、必要な手続きを確認するのが一般的な流れです。(ご参考:事業所の防火対策 - 東京消防庁)
気になる費用ですが、これはオフィスの規模や工事の内容によって大きく変動します。 例えば、
消火器を数本増やす程度なら:数万円程度
誘導灯を数カ所交換・増設するなら:5万円~10万円程度
小規模な間仕切り変更に伴う感知器の移設・増設なら:10万円~30万円程度
スプリンクラーヘッドの間仕切り壁新設に伴う増設(数カ所):20万円~50万円程度
フロア全体のレイアウト変更に伴う自動火災報知システムの部分的な更新なら:50万円~数百万円規模
といったケースが考えられます。 これらの費用を「高い」と感じるかもしれません。しかし、もし適切な対応を怠った場合のリスクを考えてみてください。是正命令に従わない場合の罰金はもちろん、万が一火災が発生し、消防設備の不備が原因で被害が拡大すれば、事業の一時停止、顧客からの信用失墜、そして何よりも従業員の安全が脅かされるといった、計り知れない損失につながる可能性があります。
事業継続計画(BCP)の観点から見れば、消防設備への投資は、こうした壊滅的なリスクを未然に防ぐための極めて重要な「投資」です。専門業者に依頼すれば、法令を確実に遵守できるだけでなく、将来的な追加コストの発生を抑える最適な設計・施工が期待できます。初期費用だけでなく、長期的な安全性と事業継続性を天秤にかければ、その投資対効果は明らかでしょう。
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ここまで、オフィスのレイアウト変更に伴う消防法の注意点や、必要な設備について解説してきました。情報が多く、自社で何から手をつければ良いか迷われるかもしれません。
オフィスのレイアウト変更や消防設備は、専門知識が不可欠です。本記事の情報を参考に、ご自身のオフィスで少しでも判断に迷う点があれば、専門家への相談が最も確実な解決策となります。
オフィス移転や大規模なリニューアルを計画している時
間仕切り壁の新設、撤去、大幅な移動を伴うレイアウト変更を行う時
従業員数やオフィスの使い方が大きく変わる時
消防署から何らかの指摘や指導を受けた時
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